チンパンジーえにっきイメージ

岡山県玉野市にあった類人猿研究センター(GARI)で研究のパートナーとして暮らしていたチンパンジー8人。
彼らのようすを、写真を添えてつづってきた2004年8月から2013年3月までの「えにっき」の記録です。

2012.11.25「毎年恒例!秋のおくりもの」

11月3日。
今年も類人猿研究センター(通称GARI)のチンパンジーのために、あったかーい秋のおくりものが届きました!
毎年ご近所の方が持ってきてくださる、いい匂いのする刈りたてのワラのプレゼントです。
しかも、軽トラック2台分!(関連ページ:2006年11月のえにっき)

(下写真:チンパンジーの見ている場面で居室にワラを敷くスタッフ)

GARIのチンパンジーたちは、毎晩ワラのベッドで寝ています。
「居室(きょしつ)」と呼ばれるチンパンジーの寝室には、おしっこなどを吸い取る役目のおがくずと、その上に、ふとんの役目のワラを敷き詰めています。
このワラの上で、毎日のようにチンパンジーの寝かしつけをし、チンパンジーのそばで私たちスタッフも一緒に寝ているのです。

(下写真:スタッフのそばで横になるツバキ)

「えぇ~!ワラの上で一緒に寝るなんて、体は痛くないの?」とよく聞かれます。
でも、私にとっては、とても快適なベッドです。

おがくずとワラは一年中敷いています。
チンパンジーたちは、夏場は敷いているワラの上にただごろんと寝ることが多いのに対して、秋口の肌寒く感じるころから、ワラを自分の体の周りにたくさん集めて、こんもりとしたあたたかそうなベッドを作るようになります。

「そんなワラなんて、どれでも同じでしょ?」と思うかもしれません。
一口にワラといっても、その品質はいろいろです。 ワラによってはカビ臭かったり、農薬がたくさんついていたりして、チンパンジーがじんましんを出すこともあります。
私たちは、みんなに使ってもらうワラはできるだけちゃんとしたものを用意しようと心がけています。

「そんなことチンパンジーにわからないんじゃない?」と思うかもしれません。
でも、彼らは"良いもの""悪いもの"を見抜く力がすごいのです。

"食べ物"も一瞬で善し悪しを見抜きます。見た目はいつもと変わらないブドウやサツマイモなども、彼らがしきりに欲しがるものは、実際に私たちが試食してみると、たしかに普段のよりおいしい。

ドキドキしますが、"人"にしても同じ。どんなに取りつくろってもダメ。外見や表面的なことに左右されず、その人の本質をよく見抜きます。
彼らの前で、嘘をつくことはできないのです。
彼らの「見抜く力」には、いまだに驚かされることばかりです。

そんな彼らは、もちろん"ワラ"も見抜いているようです。
私たちが見ても「やっぱりいい!」と思える、毎年いただくこのワラは、これまで使っていたワラから、いただきもののワラに変えたその日、みんな居室入ってくるなり、ワラを少し口にとって食べ始めました。
普段はワラにお米が残っていない限り食べたりしないのですが、やっぱりこのワラは何か違うんだ!しかも、一瞬でわかるみんなはすごい!と思わせてくれる出来事でした。

ワラを一束一束丁寧に結び、軽トラックに積んでGARIまで運んでくださる行為。
何人もの方が一日がかり、ひょっとするともっと時間がかかっている作業かもしれません。それでも労を惜しまず、チンパンジーたちのためにしていただける、ご近所の方のそのお気持ちをとてもありがたく思います。

私たちスタッフからも、チンパンジー8人に秋のおくりもの第二弾です。

11月21日。
落ち葉がおちはじめるこの時期の、毎年恒例のプレゼントです。 (関連ページ:2008年12月のえにっき)

(下写真:落ち葉を集めるスタッフ)

一年前のぐったりした落ち葉とともに、さみしくなった第二放飼場(半屋内運動場)を一新!
地面は土がみえるようにきれいにそうじをし、ベッドやタワーもうんこやゴミをきれいにそうじしました。
茂り過ぎたオカメヅタも剪定したころで、地面におがくずを敷きつめます。

(下写真:オカメヅタ剪定中)

そして、その上には、その日スタッフ全員で山で集めてきた今年の落ち葉を敷き詰めました。
あ、そうそう!切れていたホースも新しくつけなおしました。
みんなが移動しやすくするためのホースは、このようにブランコにもなります(笑)
でも、ブランコとして使ってくれるかは…どうかな?

(下写真:身軽にタワーに上りホースの強度を確かめる座馬さん【上】、
そのホースブランコでチンパンジーが使う様子を実演する不破さん【中】、
落ち葉を敷き詰めた放飼場【下】)

さて、すがすがしくなった第二放飼場にみんなを呼んでみました。
今年の反応は…?

入るなり、子どもたちはウキウキと走り回り、大人たちは落ち葉を食べ始めました。
おいしいのか…?

(下写真:落ち葉を拾って食べる左からジャンバ、ツバキ、ロイ)

イロハはぞうきんがけのようにして、せっかく敷いた落ち葉を押しやったり、まき散らしたりして遊んでいます。
ロイ、ナツキ、イロハで落ち葉の上でのおいかけっこも始まりました。
剪定したオカメヅタのつるもそのまま置いておいたら、ミズキが満足そうに、オシャレなベッドをつくりはじめました。

(下写真:オカメヅタでベッドを作るミズキ)

そして、なんとブランコの出番が!
イロハが逆さ吊りになって大きく揺れながら、ツバキに向かって落ち葉をまき散らして遊んでいます。
これはもはやただのブランコではなく、"空中ブランコ"の域!(笑)

(下写真:空中ブランコ芸で遊ぶイロハ)

なにはともあれ、ワラも落ち葉もみんなとても喜んでくれたようです。よかった♪

彼らが岡山で過ごす最後の冬になるかもしれない今年の冬も、これまでと変わらずできる限り楽しく、しあわせに暮らせるように努力したいと思います。

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