岡山県玉野市にあった類人猿研究センター(GARI)で研究のパートナーとして暮らしていたチンパンジー8人。
彼らのようすを、写真を添えてつづってきた2004年8月から2013年3月までの「えにっき」の記録です。
みなさんは、チンパンジーが普段どんなものを食べているかご存知でしょうか?
「サルと言えばバナナ!」と言われることがありますが…、もちろん「バナナ」も大好物です。
野生のチンパンジーは、主に果実などの植物を食べます。
そのほかにも、アリ塚でアリを棒で釣って食べたり、水藻をすくって食べたり、時には狩りをして小動物の肉を食べたりすることが知られています。
この食物レパートリーは実に年間約200種類にも及ぶのだそうです。
では、類人猿研究センター(通称GARI)のチンパンジーは何を食べているのでしょう?
GARIでは、主に野菜と果物を中心に与えています。これらで補えないたんぱく質などは「ペレット」と呼ばれる固形人工飼料を与えています。 野生ほどの食物レパートリーには及ばないまでも、飼育下のチンパンジーにもできるだけ多くの種類の食物を与えるよう心がけています。
1年中常備している野菜だけでも、
かぼちゃ、きゃべつ、きゅうり、ごぼう、さつまいも、じゃがいも、ねぎ、だいこん、たまねぎ、チンゲンサイ、トマト、なす、にんじん、にんにく、はくさい、ピーマン、ブロッコリー、れんこん…と、実・葉・根、全ての野菜を備えています。
果物も、オレンジ、りんご、バナナ、キウイ、パイナップル、グレープフルーツ、レモン…と豊富です。
また、これだけでなく旬の野菜や果物も与えています。
例えば今の時期ならこんなにおいそうなデラウェアやさくらんぼなども。
チンパンジーは与えられた食物だけでなく、第一放飼場(野外放飼場)の山でいろんな植物を食べていますから、
実際にはかなりの種類のものを食べています。
このような野菜や果物を、実験の時やごはんの時に与えているのですが、1年を通して毎日の食事の様子を見ていると
興味深いことがありました。
冬には、きゅうりやトマト、なすなどの野菜を嫌い、あまり食べなかったのに対し、
夏になるとこれらの野菜をムシャムシャとおいしそうに食べるようになりました。
同じように、冬にはハクサイやきゃべつ、ブロッコリーをおいしそうに食べていたのに、
最近ではポイッと捨ててしまうことがあります。
彼らは、ちゃんと夏には夏野菜を好んで食べ、冬には冬野菜を好んで食べているようです。
今の日本は、1年中、季節に関係なく同じ野菜や果物が手に入ります。
でも、きっと体が本当に欲しがっている食べ物は、やはり季節に合ったものなのでしょう。
それが自然のしくみなのだということを、季節の野菜を知識では知らないチンパンジーが教えてくれているような気がします。