チンパンジーえにっきイメージ

岡山県玉野市にあった類人猿研究センター(GARI)で研究のパートナーとして暮らしていたチンパンジー8人。
彼らのようすを、写真を添えてつづってきた2004年8月から2013年3月までの「えにっき」の記録です。

2006.3 「コンピュータ課題」

毎日凍えるようだった冬が過ぎ、すっかり春の陽気に包まれている今日この頃。
チンパンジーの暮らす山の木々も芽吹き、どこからともなく鳥のさえずりが聞こえてきます。

樹皮を食べるミズキ

寒さが苦手でひなたぼっこばかりしていたチンパンジーも、このところの陽気で、毎日活発に動き回るようになりました。
山に入り、木の枝を折って食べたり、みんなで追いかけっこをして遊んだり・・・。

そんなふうにチンパンジーが自由気ままに過ごしている第1放飼場(野外放飼場)では、チンパンジーを実験室に呼び入れるのではなく、
チンパンジー6人が第1放飼場(野外運動場)にいながらにして参加できる、タッチパネルコンピュータを使用した実験が始まっています。
平田研究員によるチンパンジーの社会関係の分析を目指した試みです。

第一放飼場のドーム

第1放飼場には「ドーム」と呼ばれている観察通路が設けられています。
中にヒトが入り、外のチンパンジーを観察できる仕組みになっています。
ここに2台のタッチパネルコンピュータが設置してあり、チンパンジーは外からタッチパネルに触れ、課題に取り組むことができます。

タッチパネルコンピュータが操作できない赤ちゃんのナツキを除き5人で2台のコンピュータしかありません。
そこでこの2台のコンピュータに、だれがどんな条件の時に課題に取り組むのかを観察・分析することで、
彼らの社会関係を見ようというわけです。

現在おこなっている課題は、コンピュータ画面にランダムに表示された1から最高6までの数字を、数の小さいほうから順番にタッチすると正解、という学習です。
この学習には個体差があり、現在オスのロイとジャンバは1から6までが安定して正解できています。
これに対し、最年少(赤ちゃんのナツキを除く)のミサキは1と2だけでもあまり正解できない状態です。
これは単に、賢いとかそうでないとかいう問題だけではなく、学習時間にも関係があるようです。

皆勤賞で課題に取り組むジャンバ

ミサキは、群れの中で一番順位が低いということもあり、なかなかコンピュータの前に座ることができません。
他の子に占領されてしまうからです。

たとえ、運良くコンピュータの前に座り課題に取り組むことができても、ロイの動きなど、常に周囲の様子を気にしていて
なかなか課題に集中できていない様子です。

一方、順位の高いオスのジャンバはコンピュータ実験の時間になると、 放飼場のどこにいても飛んできます。
雨の日も風の日も、お腹が痛い日だって必ずコンピュータの前に来て、課題に取り組みます。
皆勤賞のジャンバの結果が、今の学習の成果となっているのかもしれません。

これはほんの一例ですが、この学習の様子からもチンパンジーの社会関係を垣間見ることができます。

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