岡山県玉野市にあった類人猿研究センター(GARI)で研究のパートナーとして暮らしていたチンパンジー8人。
彼らのようすを、写真を添えてつづってきた2004年8月から2013年3月までの「えにっき」の記録です。
ナツキが生まれてもうすぐ3ヶ月。
現在、昼間だけではありますが、ナツキは「群れ」の中で生活できるようになりました。
新しい赤ちゃんチンパンジー「ナツキ」の存在に、群れのみんなは興味津々です。
「なんだ?!このちっちゃいヤツは?」
「あたしが、かわいがってあげるわよー。」
…と言っているかどうかはわかりませんが、みんな、あの手この手を使ってナツキに近づき、触りたくてうずうずしている様子。
ロイも、
ジャンバも、
ミズキも、
ミサキも。
ナツキ生後12日目。
この日からナツキ&ツバキと群れの仲間たちとの"お見合い"が始まりました。
野生では、オスが赤ちゃんを殺してしまうという事例もあり、飼育下の群れでも、赤ちゃんとオスたちの対面はとても心配されたことでした。
心配の要素はそれだけではありません。
子どもの頃から1日も離れず群れのみんなと過ごしてきたツバキが、出産からはずっとお互いの顔を見ることもなく、別々に暮らしていました。
「早くみんなの所に戻りたい!」「でも、まだ弱々しい赤ちゃんもいるし、ロイたちに会うのがちょっと恐い」・・・と、ツバキにも複雑な気持ちがあったことでしょう。
一方、他の子たちもツバキが急にいなくなってから、群れ全体のバランスをくずし始めていました。
ロイはストレスから自分の体の毛を抜いてしまったり、ミサキは情緒不安定になってすぐに泣きだしたり…と。
そんなお互いがピリピリとした緊張状態の中で、いきなり「ごたいめ~ん!」という訳にはいきません。
じっくり、ゆっくりと、ひたすら毎日"お見合い"が行われました。
一時は"お見合い"中に、ロイやジャンバが毛を逆立てディスプレイを始めてしまい、ナツキに危害を加えてしまうのでは…と、危険を感じる場面もありました。
しかし、それでも毎日小さなステップを繰り返した結果、"お見合い"を始めてから約1ヶ月後、ようやく第1放飼場(野外の広い運動場)での6人での生活が始まったのでした。
ナツキはもうあいさつだってできます。(本当はお母さんの声に反応しているだけ)
他の大人たちに混じって今日もナツキの太いあいさつの声が「オッオッオッ」と、聞こえてきます。