チンパンジーえにっきイメージ

岡山県玉野市にあった類人猿研究センター(GARI)で研究のパートナーとして暮らしていたチンパンジー8人。
彼らのようすを、写真を添えてつづってきた2004年8月から2013年3月までの「えにっき」の記録です。

2005.9 「気になるあの子」

ナツキが生まれてもうすぐ3ヶ月。

現在、昼間だけではありますが、ナツキは「群れ」の中で生活できるようになりました。
新しい赤ちゃんチンパンジー「ナツキ」の存在に、群れのみんなは興味津々です。

「なんだ?!このちっちゃいヤツは?」
「あたしが、かわいがってあげるわよー。」

…と言っているかどうかはわかりませんが、みんな、あの手この手を使ってナツキに近づき、触りたくてうずうずしている様子。

ロイも、

ジャンバも、

ミズキも、

ミサキも。

ナツキ生後12日目。

この日からナツキ&ツバキと群れの仲間たちとの"お見合い"が始まりました。
野生では、オスが赤ちゃんを殺してしまうという事例もあり、飼育下の群れでも、赤ちゃんとオスたちの対面はとても心配されたことでした。
心配の要素はそれだけではありません。
子どもの頃から1日も離れず群れのみんなと過ごしてきたツバキが、出産からはずっとお互いの顔を見ることもなく、別々に暮らしていました。

「早くみんなの所に戻りたい!」「でも、まだ弱々しい赤ちゃんもいるし、ロイたちに会うのがちょっと恐い」・・・と、ツバキにも複雑な気持ちがあったことでしょう。
一方、他の子たちもツバキが急にいなくなってから、群れ全体のバランスをくずし始めていました。

ロイはストレスから自分の体の毛を抜いてしまったり、ミサキは情緒不安定になってすぐに泣きだしたり…と。
そんなお互いがピリピリとした緊張状態の中で、いきなり「ごたいめ~ん!」という訳にはいきません。
じっくり、ゆっくりと、ひたすら毎日"お見合い"が行われました。

一時は"お見合い"中に、ロイやジャンバが毛を逆立てディスプレイを始めてしまい、ナツキに危害を加えてしまうのでは…と、危険を感じる場面もありました。
しかし、それでも毎日小さなステップを繰り返した結果、"お見合い"を始めてから約1ヶ月後、ようやく第1放飼場(野外の広い運動場)での6人での生活が始まったのでした。

ナツキはもうあいさつだってできます。(本当はお母さんの声に反応しているだけ)

他の大人たちに混じって今日もナツキの太いあいさつの声が「オッオッオッ」と、聞こえてきます。

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