チンパンジーえにっきイメージ

岡山県玉野市にあった類人猿研究センター(GARI)で研究のパートナーとして暮らしていたチンパンジー8人。
彼らのようすを、写真を添えてつづってきた2004年8月から2013年3月までの「えにっき」の記録です。

2005.6 「チンパンジーはグルメ?」

今回は、森村研究員の行っている「カフェテリアテスト」という実験をご紹介します。
京都大学霊長類研究所の上野吉一さんとの共同研究です。

「カフェテリア」。つまり、自分が食べたいものを自由に選べるというスタイル。
これにより、チンパンジーの食べ物の好みは「とにかく○○が好き!」というように「固定」したものものなのか、それとも、同じ食べ物でも好きなときもあればそうでないときもあるなど「変化」するものなのか、ということを調べる食物嗜好テストです。

実験の方法は、チンパンジー1個体が1度では食べきれない量の食物5品目(根菜類・葉茎菜類・果菜類・果実2種)を一度に呈示し、自由に選択できる場面を作り、そこで、チンパンジーが何をどれだけ食べたかを記録しました。
これを同じ個体で1日に5回、2日間行いました。

これは、ジャンバのカフェテリアテスト(2日目の3回目)の様子です。
実験室に入ってくるなり、大はしゃぎのジャンバ。
小さな実験室を走り回り、でんぐり返しをし、とにかく体全体で「うれしい」を表現していました。
普段は、山積みの食べ物があって、好きなだけ食べられるという状況はないため、無理もありませんが・・・。

この日、用意された5品目はダイコン・キャベツ・トマト・オレンジ・バナナ(各2Kg)です。
不破研究員が行っている嗜好テスト(2004年12月えにっき掲載)では、チンパンジーは野菜より果物を好み、中でも糖度やカロリーの高いものを好むということがわかっています。

この時、うきうきしたジャンバがとった行動は・・・。

① オレンジ、バナナをかき集め・・・、

② バナナをムシャムシャ・・・。

③ 次にキャベツを持ってきて・・・ムシャムシャ。

④ さらにトマトをかき集め・・・。ガブッ。

チンパンジーは、野生では木の枝など、飼育下ではワラや布、時には自分のお気に入りの物を自分の周りに集めベッドを作る習性があります。
この時のジャンバも、ベッドのように自分の周りにたくさんの食べ物を集めていました。
たくさんの食べ物に囲まれてとてもご満悦な様子。
ヒトに置き換えれば、おかしの家を見つけたようなうれしい気持ちに違いありません。
私にはわかるなぁ、ジャンバの気持ち。

同様の実験をロイ、ミズキでも行ってきました。
これまでの実験から、
・ 必ず最初に好物を食べるとは限らない。
・ いつ食べるかを自分で調整する。
・ 好物があってもそればかりを食べるのではなく、時には味を変えて違う食べ物を口にする。

などがわかっています。
このことからも、チンパンジーは、「いくら好物でも同じものばかりではなく、違うもの、いろんなものを食べたい」という欲求を持ち、「量よりもむしろ質」を選択する動物なのではないかと考えられます。

ヒトは毎日、実に様々な種類の食物を「選択」して食べています。
それは単に「栄養面」という問題だけでなく、同じ食べ物でも違う調理法や食べるシチュエーションまでも考え、より変化をもたせ、食べることを楽しんでいます。
この「変化をつける」というスタイルは、ヒトだけでなくチンパンジーにも共通なことなのではないかと森村研究員は考えています。

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