チンパンジーえにっきイメージ

岡山県玉野市にあった類人猿研究センター(GARI)で研究のパートナーとして暮らしていたチンパンジー8人。
彼らのようすを、写真を添えてつづってきた2004年8月から2013年3月までの「えにっき」の記録です。

2004.12 「ひなたぼっこ」他2編

師走です。
世間は急に慌ただしくなる12月ですが、今日の林原類人猿研究センター(通称GARI)のチンパンジー5人はとてものんびりです。

砂浜に打ち寄せる波の音。 風に吹かれる葉っぱの音、トビの鳴き声。 日差しはぽかぽかと暖かいけれど、時折冷たい風が吹く。
第一放飼場には、そんな穏やかな冬がおとずれています。
「今日は何時までにこれを・・・」などと時計を気にし、なにかと時間にとらわれがちな世の中ですが、ここでは時がとてもゆったりと流れているように感じます。

そんなのんびりとしたお昼にみんながすることは・・・。

上:ミズキ「ふぅ~。」
中:ツバキ「あぁ、きもちい~。」
下:ジャンバ「アハハ。」(一人で遊びながら笑うジャンバ)

ロイ「ぐぅ・・・。」

みんな、ひなたでとっても気持ちよさそう。 やはり、冬はこれに限りますね。

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12月に入り、日ごとに寒さが増してきました。 風邪などひいていませんか?
私はこの時期になると、子どもの頃に飲んだ甘いシロップ味の風邪薬を思い出します。
子どもの頃は、風邪薬でも歯みがき粉でも何でも甘い味になっていました。
それは、ヒトの子どもが甘いものを好むからなのでしょう。

では、チンパンジーの食の好みはどうなのでしょう?

GARIでは不破研究員が、チンパンジーの食の嗜好性を調べる研究を行っています。

ジャンバの前にあるトレイの中には20品目の食物がランダムに置かれています。
20品目の中身は、リンゴ、バナナ、オレンジ、グレープフルーツ、キュウイ、レモン、パイナップル、ダイコン、ニンジン、キュウリ、ピーマン、白ネギ、サツマイモ(生)、サツマイモ(加熱)、ナス、キャベツ、チンゲンサイ、チョコレート、落花生、ペレット(固形飼料)です。
この中から食べたい順番に選んでもらい、好みを調べるのです。

チンパンジーにはあらかじめ「手話サイン」を教えました。 不破研究員があごの下に手を置いています。これは「待て」というサインです。 「待て」サインを出しているとき、ジャンバは食べ物を取ることはありません。

次に、人差し指を立て、左右に振ります。これは「どれ?」というサインです。
「どれ?」サインを出すとジャンバは欲しい物を選び、不破研究員に渡します。

最後に、ジャンバが口に手を当て「食べる」というサインを出します。
そうして、選んだ物を食べさせます。
この一連の流れを繰り返し、20品目すべてに順番がつくというわけです。

個体差はありますが、サツマイモやバナナ、リンゴなどが上位に入ります。
逆に最下位に選ばれる確率が高いのがチンゲンサイです。 これまでの傾向ではチンパンジーは甘くてエネルギー(カロリー)の高いものを好むということがわかっています。

ちなみに、どういうわけか最近ツバキはチンゲンサイを一番に選びます。

ヒトがそうであるように、チンパンジーも成長するにつれ食の好みが変わるのでしょうか? 新たな課題も含め、この研究はまだまだ発展しそうです。

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メリークリスマス♪そしてよいお年を!
GARIのチンパンジーたち、そして皆さんにとって、来年がよい一年となりますように。

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